折戸洋俳句選集 2

梟の闇をうかがひつつ食らふ

 

読初の特急券を栞とす

 

どことなくしゆつとしてをり雪達磨

 

銭湯の瓶の牛乳日脚伸ぶ

 

阿弗利加の仮面と向かふ火鉢かな 

 

煮凝や壁に聖句を貼りつけて

 

冬ごもり積みたる本を積み直し

 

屋上に煙草吸ひをり文化祭

 

みざるときまばたきしたる菊人形

 

冬耕やラジオのうたふ流行歌

 

二階よりとんと音して秋に入る

 

水腹の重き残暑をとぼとぼと

 

夏座敷だれもつづきを知らぬ唄

 

車窓より鞄なげこむ帰省かな

 

北窓を開けマルボロの封を切り

折戸洋俳句選集

街灯の吃り止まずや啄木忌

 

蛇干して巻きて積みたる夜店かな

 

書肆にしてアダルトショップ蚯蚓鳴く

 

鳩時計鳩ひきこもる西日かな

 

中辛の思はぬ辛さ漱石忌

 

北窓を開けマルボロの封を切り

 

なにもせぬ一日なりけり桐一葉

 

香水やルールわからぬ試合観て

 

でたらめに作りて旨し桃の花

 

連れ込みの城を模したり山笑ふ

 

ハナマサに力士肉買ふ菜種梅雨

 

どんぶりへ麺たたまれし夜寒かな

 

辞儀深き福助小僧鳥渡る

 

すぐかわく坊主頭や法師蝉

 

軟式のちやらい雰囲気雪達磨

 

起きて笑点を観る

 

皇后の帽ちらと見ゆ吾亦紅

 

東京ドームふたつくらいの夏野かな

 

からくりの運ぶ茶碗や濃紫陽花 

 

ゆくゆくは詠み人知らず天の川