折戸洋俳句選集

街灯の吃り止まずや啄木忌

 

蛇干して巻きて積みたる夜店かな

 

書肆にしてアダルトショップ蚯蚓鳴く

 

鳩時計鳩ひきこもる西日かな

 

中辛の思はぬ辛さ漱石忌

 

北窓を開けマルボロの封を切り

 

なにもせぬ一日なりけり桐一葉

 

香水やルールわからぬ試合観て

 

でたらめに作りて旨し桃の花

 

連れ込みの城を模したり山笑ふ

 

ハナマサに力士肉買ふ菜種梅雨

 

どんぶりへ麺たたまれし夜寒かな

 

辞儀深き福助小僧鳥渡る

 

すぐかわく坊主頭や法師蝉

 

軟式のちやらい雰囲気雪達磨

 

起きて笑点を観る

 

皇后の帽ちらと見ゆ吾亦紅

 

東京ドームふたつくらいの夏野かな

 

からくりの運ぶ茶碗や濃紫陽花 

 

ゆくゆくは詠み人知らず天の川