折戸洋俳句選集 2

梟の闇をうかがひつつ食らふ

 

読初の特急券を栞とす

 

どことなくしゆつとしてをり雪達磨

 

銭湯の瓶の牛乳日脚伸ぶ

 

阿弗利加の仮面と向かふ火鉢かな 

 

煮凝や壁に聖句を貼りつけて

 

冬ごもり積みたる本を積み直し

 

屋上に煙草吸ひをり文化祭

 

みざるときまばたきしたる菊人形

 

冬耕やラジオのうたふ流行歌

 

二階よりとんと音して秋に入る

 

水腹の重き残暑をとぼとぼと

 

夏座敷だれもつづきを知らぬ唄

 

車窓より鞄なげこむ帰省かな

 

北窓を開けマルボロの封を切り